創展第55回展中止に依る「オンライン特別企画展」開催のご案内
昨年に引き続き今年度、第55回創展・秋季展は中止と決定致しました。
9月27日(月)~10月5日(火)迄、第55回創展は、東京上野、東京都美術館で開催を予定致して居りました。
会員他構成員100名余は日頃の研鑽、制作活動の成果を発表出来る事を今年こそはと心待ちにして居りましたが、ご承知の如くコロナ禍の猛威は益々拡大の一途を辿っており、特に東京を中心とする首都圏は収束どころか医療崩壊寸前の現状の様子です。又、地方の状況も悪化の一途を辿っている状況と報道されていますので、無念の思いで、上記の如くの決断に至りました。
創展の執行機関である理事会はコロナ禍の脅威に屈して、中止を決定せざるを得ませんでしたが、”創展は歩みを止めない!歩み続けます!”の理念を全員で共有して、昨年に引き続き、ウェブ上で「オンライン特別企画展」を開催致します!
開催日は第55回創展開催日に合わせた、9月27日から年末12月31日迄と致しました。開催期間は少し長くなりますが、皆様にゆっくりとご覧頂ける様にとの思いで企画致しております。特に地方の会員の方々又その支持者の皆様には県境を跨ぐ遠出の自粛を要請されている中にあって、昨年も好評であったオンライン開催の利便さを是非ご活用頂きたいと思います。
著名な美術評論家、勅使河原純先生の出展作品の講評も昨年は大好評でしたので、引き続き今回もご依頼致しました。昨年は20点の作品に、実に誠心誠意、美術評論家の確かな目と勅使河原先生の美意識、絵画芸術論、理念、持論を如何なく駆使された講評を頂き感激した作家も多く、企画主催者側も大いに満足致しておりました。今回は昨年を上回る作品数のご講評をご依頼致し、ご快諾頂いて居りますので是非、皆様、先生の講評にお目を通して下さい!
皆々様方のご健勝とご多幸を心からお祈り申し上げると共に、引き続き創展をご支援頂き度く理事会及び全構成員からのお願いと、ご案内を申し上げる次第です。
2021・9・27創展・創作画人協会
森水碧先生を悼む
今年3月にお亡くなりになった森水碧先生は、創展の理事会員として会の要である事務局長を長く務めてくださり、多くの創展会員が母とも慕う存在でありました。ご生家は東京渋谷の有名な写真館、女子美をご卒業後、女流作家協会にも所属され数々の秀作を生み出され、会に多大なる貢献をされました。思い起こせば多くの事がございますが、いつも冷静で正統派であることを感じておりました。
今回オンラインで遺作をご提供いただく赤堀通夫会員も森先生をお慕いする一人でありました。私も先輩画家である森先生の90歳のお祝いの会に参加させていただいたことを、つい先頃のことの様に鮮明に記憶しております。訃報に接したときに正に“巨星落つ”の感覚でした。
創作画人協会 森 務
赤堀通夫会員を悼む
今年1月にお亡くなりになった会員赤堀さんをご存じない方も多いと思います。
赤堀さんは創展の古い会員であり、その描く絵画は正に心の中にある赤堀芸術の叫びそのものでありました。画面からにじみ出る静寂はあくまでも透明で美しく、なんの衒いもなくひたすら絵画芸術を求める赤堀さんのお姿を見て、地元四国は勿論、中央画壇に於いても、多くの赤堀ファン、創展関係者、美術評論家、マスコミ、海外における展覧会でも皆感動し絶賛しています。それと言うのも、赤堀会員は手足が機能せず(肢体麻痺)、筆を口に咥え油彩を操り、奥様が献身的に支えとなり創作に挑戦し続けました。
創展は一貫して赤堀絵画を高く評価し、その精神性の高い芸術作品を愛しました。
昨年の54回展も今回の55回展もオンライン掲載ですが、来年こそは東京都美術館に作品を展示できることを切望しています。
創作画人協会 森 務
第55回創展中止による特別企画展
創展は歩み続けます!
作品講評:勅使河原 純
評論家 勅使河原純先生の目に留まった作品を講評していただきました。
絵描きはしばしば、心の奥に一つの問いを抱えている。「絵とは何か」という厄介な疑念だ。各美術団体はそれぞれに個性的な回答を準備していそうである。しからば、この創作画人協会ではどうか。かつて横山大観が嘯いたように「この私こそが絵画なんだ」と、堂々と言ってのける人が案外多いかもしれぬ。野太い信念が、最先端の美術ばかりを目指しているわけではないにしろ、日々鍛錬して止まない真摯で一途な人生を支えているのだろう。
森務「月の曲べ」
夜の王者月には、太陽とはまた違った典雅な優しさがある。それを乙女たちの美しい肢体に籠め、自在に舞わせたものか。月光の繊細な波が次々と打寄せてくる様が心地よい。
辻一美「春信~茅葺の駅舎」
今時茅葺の駅舎があるのかとビックリするが、実在を確信させる緻密な描き振り。ことに茅葺と満開の桜が相まって醸し出す早春の息吹は、思わず溜息が漏れるほどの美しさ。
阿久津冴子「ハロン湾の夕陽」
小島(奇岩)のそそり立つハロン湾の景観は、つとに有名だ。だが緑の海に輝く真っ赤な夕陽は、世界中どこにもない最早この人だけのもの。決定的一瞬とはこれをいうのか。
大久保亮「短い宇宙」
富士山をバックに、その山懐に抱かれる小さな命にもグングン惹かれていく。画家の魂は清々しい。蝉の変態を巧みにアレンジした黒い帯は、ダブルイメージの新手だろうか。
百瀬まつ子「鳥の見た風景」
大空を飛びまわる鳥達は、一体どんな景色をみているのか。上に昇ると遠くの家や林が
小さく、中ほどでは田畑の矩形まで、そして下では葉っぱの一枚一枚が手にとるように。
浅利秀一「トルコ絨毯と私(自画像)」
歴史に造詣の深い人として、トルコ絨毯は注目の的か。四角い枠にさまざまなデザインを籠めた明るさに惹かれ、自身も遂にトルコ人となった一風変わった自画像が絶好調。
高岩由美子 「想い」
私の人生の主人公はもちろん私自身。素晴らしい髪飾りをつけ、犬を連れてひとり画面を独占する。目指すは理想の恋愛と家庭か。少女時代の想いはまだ健在そのものだ。
鬼頭霧子「想塊」
タイトルも造形もただならぬ謎を孕んでいる。黒い塊は宇宙空間を彷徨う小惑星か。はたまたやるせない人の心にポッカリと浮かんだ、歯を剥く怨念みたいなものだろうか。
左時枝「ダリア」
数ある花の中でも華麗さでは一、二を争うダリア。画家はその強さに導かれ、花の 本質に分け入ろうとする。赤い筋がそのまま生命の表示ともいえそうな迫真の描写だ。
作品をご購入希望の方は事務局にご連絡ください。
創展事務局住所 〒195-0063 東京都町田市野津田町3464-20木村巴方
電話 042-860-3717 アドレス tomonta@msn.com
(美術評論家・勅使河原 純)
以 上 2021年9月13日
美術評論家、キュレーター
勅使河原 純
- 『菱田春草とその時代』 六芸書房、1982
- 『裸体画の黎明 黒田清輝と明治のヌード』 日本経済新聞社、1986
- 『美術館からの逃走 現代「美術」は風景にからみつき』スタンリー・N.アンダソン訳.、現代企画室、1995
- 『アフター・アート 美術をやめるための美術論』 スカイドア、1998
- 『花のピカソと呼ばれ 華道を超えていった宗匠・勅使河原蒼風の物語』 フィルムアート社、1999
- 『暴力と芸術 ヒトラー、ダリ、カラヴァッジォの生涯』 フィルムアート社、2003
- 『アンリ・ルソーにみるアートフルな暮らし 史上もっとも成功した熟年アート術』 ミネルヴァ書房、2004、シリーズlife×art
- 『絵描きの石原慎太郎』 フィルムアート社、2005
- 『「ひまわり」落札』 めるくまーる、2006